【書籍紹介・レビュー】著者の仕事ノートも公開。『広告コピーってこう書くんだ!相談室(袋とじつき)』谷山雅計・著

- 著 者:
- 谷山雅計
- 出版社:
- 宣伝会議
- 出版年:
- 2015年10月
著者の谷山雅計氏は、コピーライター、クリエイティブディレクター。博報堂を経て、谷山広告を設立。代表作には、「ガス・パッ・チョ!」(東京ガス)、「日本の女性は、美しい。」(資生堂/TSUBAKI)、「Yonda?」(新潮文庫)、「日テレ営業中」(日本テレビ)などがあります。
本書の第1部は、広告コピーに関するさまざまな質問に回答しており、まさに書名のとおりの「相談室」です。第2部では、著者が「将軍コピー」と呼んでいる「キャンペーンコピー」の書き方を体系的に解説しています。また、付録(袋とじ)では、「ガス・パッ・チョ!」(東京ガス)をつくった仕事の際に使用していたノートを公開し、その内容について解説を加えています。
第1部には、たとえば、著者がいうコピーを書く際の3つのステップ(「散らかす」「選ぶ」「磨く」)にまつわる質問があります。
「たくさん散らかすコツ」については、野球のたとえを交えながら、「技術を活かすには、根本的な思考能力、つまりは地アタマのよさという基本の力がまず必要です」といい、地アタマをよくするには、ということについて述べています。
「選び方」については、「逆の視点で考える生活」をすすめています。「自分が受け手のときは、つくり手の目で考えて、つくり手のときは、受け手の目で考える」ということを習慣化する生活です。
他に、コピーライターに向き・不向きはあるか、プレゼンのコツや理想的なオリエンとは、「的はずれなクライアントからの修正依頼に、どう対処すればいいでしょうか?」など、多彩な質問に回答しています。
プレゼンについての回答にも触れたいと思います。「ある種の話し方の押し引きのコツがつかめてきて」相手を説得できるようになるのは、「すごくこわいこと」だといいます。もし、50点の価値の広告案が80点に見えて採用されたら、それは自分の首を絞めることになる、と。50点の広告がクライアントにプラスをもたらすことはないからです。いいアイデアを考え、その案のよさがわかるように説明できればいい、ということを伝えています。著者は、「毎回、どんなふうにアイデアを考えたかという過程を、シンプルにずっと説明していくだけ」だそうです。
第2部では、「将軍コピー」と「剣豪コピー」の違いを実際のコピーの例をあげながら明確にし、そのあとで、「将軍コピー」を書くために必要な「8つのチェックポイント」を説明しています。
私は、本書の付録(袋とじ)がもっとも印象に残りました。仕事の際に使用していたノートが公開されることはあまりないと思います。このノートからは、さまざまな視点でコピー案を考えていることが伝わってきます。制作における谷山氏の思考過程を垣間見ることができます。