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キャッチコピーの事例

1981年の西武百貨店のキャッチコピーを考察

キャッチコピーCase No.37言葉の相乗効果を生かす

キャッチコピーの事例を取り上げる第37回は、1981年の西武百貨店のキャッチコピーです。名コピーとして多くの人に知られています。

不思議、大好き。

コピーライターは、糸井重里さん。

糸井重里さんご自身が、ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)の『まずは状況から話そうか。糸井重里のコピー10』というコンテンツで、このキャッチコピーについて語っています。インタビュアーは、こちらも有名なコピーライターの谷山雅計さん(2025年5月現在、東京コピーライターズクラブ会長)。

上のインタビューでは、「不思議」という言葉がなぜ選ばれたのかも語られています。まだ読んでいない方は読みに行くと思いますので、ここには大まかに書いておきます。

これは、西武百貨店の年間キャンペーンの仕事。この年、西武百貨店の夏の目玉は「エジプト展」だったことから、糸井重里さんは、「世界の七不思議でやろうか」という提案をされて、そこから「不思議、大好き。」のコピーが出てきたそうです。

インタビューを読むまでは、なぜ百貨店のコピーで「不思議」という言葉が思い浮かぶのかわかりませんでしたが、納得です。

もう一つの言葉、「大好き」については、つぎのように語られています。

「「大好き」については、スポーツ大好き少年とかっていう言い方で、いくらでもありましたからね。だから、「大好き」っていうのは簡単で、(略)、他からいただいてきた言葉なんですよ。」(上述のほぼ日コンテンツ)

そして二人のお話は、「コピーはビジュアルである」というところに辿り着きます。

インタビューでは、「不思議」という漢字の良さについて語られていたので、試しにキャッチコピーをひらがなに置き換えてみました。

「ふしぎ、大好き。」

ひらがなにすると、印象が違ってきますね。ワクワク感が控えめな感じ?

「不思議、大好き。」

漢字のほうがワクワク感が出ている気がします。どうですか?

ただ私の場合は、これを名コピーとすでに認識しているので、漢字のほうが良く思えている可能性もないとは言えません。

ちなみに、糸井重里さんが書いた、前年(1980年)の西武百貨店のキャッチコピーは、「じぶん、新発見。」です。これを考慮すると、前年からの流れで、ひらがなの「ふしぎ、大好き。」を選択しそうな気もします。でも、漢字を選んでいる。やはりインタビューのお話のとおり、ビジュアルなのでしょうね。

さて、私の目的である、キャッチコピーの事例を集めて自分なりにキャッチコピーの作り方を考える、という本題に入ります。

「不思議」という言葉には、大別すれば、好奇心を掻き立てるようなポジティブ要素と不審に思うようなネガティブ要素の両面があります。後ろに「大好き」が続くことによって、ポジティブなイメージとして確定されます。そして、「大好き」という言葉自体、心が弾んでいるようなポジティブな感じです。どちらの言葉にも、ワクワク感があります。

このように捉えれば、「不思議、大好き。」の言葉の組み合わせは、「ワクワク感 × ワクワク感」という形になっています。その相乗効果によって、ワクワク感が全開になって溢れ出てくるようなキャッチコピーになっているのではないでしょうか。

これをもとに考えると、〝同種の言葉を組み合わせ、その相乗効果によって、言葉が放つイメージをパワーアップさせる〟というキャッチコピーの作り方が見出せそうです。

初出:2025年05月11日